フジテレビが仕掛ける動画配信サービスとは

寺沢

どうなっているんですか?

野村

何かぐちゃぐちゃになってます(笑)。

寺沢

もっとまともな話が聴けると思ったのにぐちゃぐちゃになっているんですか(笑)。

野村

真面目な話をすると、雑誌は動画の見放題と相性が良いんですよね。雑誌は最新号だけを読み放題にしているので、定額料金のなかにサービスが収められちゃっているんですね。動画って見たい作品が無くなったら、もう解約しちゃおうとなるじゃないですか。雑誌は常に何かしら新しいものが放り込まれてくる。だから雑誌もあるからサービスを解約しないでいると、そのうちにまた興味のある動画が出てくる。これは究極の解約対策みたいなところがあります。

一番大きかったのは自分がただ学生のころからSPA!読者だったってことが大きいです。自分のところのFODでSPA!が読めたら嬉しいと思ったところが発端ですね。だから雑誌読み放題サービスを始めるときに、やっぱりうちのグループ会社であるSPA!を発行する扶桑社さんに真っ先にお願いしに行きました。

寺沢

こう言うとあれかも知れないけど、すごくいろんなことで攻めてきてた80〜90年代ぐらいのフジテレビのあの時代があったじゃないですか。あれを活字にしたのがSPA!ですよね。

野村

そうですね(笑)。

寺沢

(SPA!)めちゃくちゃだもん。

野村

SPA!は切り口が、みんな同じ切り口から行っているなか、SPA!だけ真横から行っているみたいな感じがありますよね。

寺沢

俺もそうなんだけど、書く人たちはどこかに寄りたいんですよね。その正道というか王道にいないと不安になるし、みんな共同通信が動くと共同通信のところに行くわけ。僕はいいじゃん配信してくれるんだから、そこと違うところに行こうよって感じがある。俺にしてみるとみんなそう動いてくれるんで、ずーっと行くじゃないですか。そういう感じで引き連れていってもらうと事件現場だと、とても取材がやりやすいですね。こっちは人の行かないところに行く。三振かホームランのどっちか。三振のときはどうやって振り逃げしようか考えているからね。振り逃げもあるんです。何をやっても全然金脈に当たらなくて、金脈には当たらないけどそれでも塵も積もれば山となるぐらいな感じのものを集めていって何とか記事にします。

野村

やっぱり動画サービスはNetfliXにAmazonやhuluなど超でかいところがいるわけじゃないですか。FODはラインナップも含めてその中でどうやって生き残っていくかっていうところなんです。もちろんそのなかでもラインナップは負けているとは思わないですが、さらに独自色を出すために、雑誌やコミックの配信をしています。

そういった他のサービスとの差別化は、すぐには実現出来ないですが常に考えてますね。考えて思いついてもサービス開始までは2年ぐらいかかったりします。でも考えていかないと、結局みんなの後追いになりますから。

寺沢

日々やる仕事って必ずあるから、それをやっていればこなせるんだけど、次の一手を考えたときに、何も考えてないと本当に一生何も出来ませんよね。

野村

はい。本当にそうですよね。失敗してもいいからとりあえずは着地しておけば、着地の仕方が悪かったものを修正していくことになるだけで、新しいことをやれるんですよ。

寺沢

それを考えると新聞は本当に新しいことをやらなすぎる業界なので、だからたぶん売れ行きが下がっているんでしょうね。

スポーツ新聞はなぜスポーツ新聞なのか?

たしか作った人は、共同通信な何かでアメリカから戻ってきた人なのかな。向こうのスポーツグラフィックか何か写真を元にした刊行物を原型にして、スポーツ新聞が出来たんです。

平林

スポーツ新聞というカテゴリーがあるじゃないですか。だけどスポーツのことを書いているわけじゃないし。。

寺沢

生活総合大衆紙です。

平林

でも名前はスポーツ新聞というカテゴリーなのが不思議だと思って。

寺沢

戦後の暗闇の時代、スポーツが一番手っ取り早く国民を元気づける明るい話題だったからだと思います。のちに美空ひばりが登場して芸能のほうに行くんだけどね。まず映画が良かったから、そのころの新聞のネガを見ると、例えば日活の控室のようなところで寛ぐ石原裕次郎や出番待ちの高倉健みたいなものが山ほどあるんですよ。

平林

逆に今の花って何なんですか?

寺沢

今だとストレートニュースは記事にしないから、例えば会見がある場合は会見のネタを一番にやるんじゃなくて、良いこと悪いことも含め会見をやる人が裏で何をやっているか。例えば実は結婚しますとか、結婚・恋愛・離婚・不倫というのが一番多いかな。だからスポーツでもホームランを打ちましたではなく、そのホームランを打った裏には何があるのっていう人間ドラマですから。

僕も東北支社にいたとき、山形であった高校野球の試合がシーソーゲームだったことが面白いと思って、そのゲームの流れを書きました。そうしたら3つ上の先輩に、これのどこに人がいるのかとえらく怒られました。最初は面白れえじゃんこれと思っていたんだけど、それを言われてから自分の記事を読んだら何も面白くなくて、「あ、人がいなきゃダメなんだな」って実感しました。

平林

人っていう見方なんですね。

寺沢

カテゴリーとしてはスポーツだし、スポーツを書いてる建前の新聞だけど、「人」ですね。人が何をやったかだし人間ドラマです。一番ドロドロしながらも感動、喜怒哀楽がある。スポーツ自体にも喜怒哀楽が無くはないけど、だけどそれはスポーツ以外にこそあるじゃない。

野村

スポーツって本当に一瞬で終わっちゃいますけど、そこに至るまでにそれぞれ人間のストーリーがありますよね。それをフィーチャーしてこの中継でもじゃあ誰に焦点をあてていくかとか、そういう見せ方になってきますよね。

寺沢

日テレの箱根駅伝がそうですね。

野村

あれはもろに人ですもんね。

寺沢

人ですね。

野村

もう今の選手から古い人までみたいな。

寺沢

唯一そういうことがあるとすると、最後の山で誰が抜くんだってところ。

僕の基本的な書き方としては、築地担当になってから書いているのは、築地で起きた出来事ではなくて、そこに関わってきた人がどんな人生を歩んできたかを出す書き方です。そうすると今までそんなことを書いてくれた記者はいなかったと言ってもらえています。だから書いていると、どんどんもういらないと思うぐらい情報が出てくる。もうそれ以上は聴きたくないからみたいなことも話す。だから築地の記事ネタはいっぱいあります。

築地にあるから出来た築地担当という記者

寺沢

日刊スポーツの人たちは本社はあるけど、取材でほとんどの場合が築地から出る。だからもともと築地の街に滞在して何かしようって気はないんですよ。むしろ取材先に行ってないということで、「ここにいるのかお前ら!」みたいな感じになる。取材に行っていたら築地にはいないじゃないですか。でも「いいね、会社築地なんだ」「うん、あるだけだけどね」みたいなことがよくあるわけです。

あるときやっぱり豊洲のほうに市場が移転して、東京卸売市場が築地から無くなる、移転するとなり誰もが大反対なわけ。それに対して地元の新聞社は朝日新聞はあるにせよ、スポーツ新聞で築地にあるのは日刊スポーツだけ。もともと戦後翌年の1946年創刊なので、日本で一番古いスポーツ新聞なんです。

それもあるんで築地のネタを取られたら恥ずかしいだろって話になって担当を作る話になり、「ああ、そうなんすか」と言っていたら、

上司「お前だ」

寺沢「えーっ、俺」

そんな感じで決まりました。そこで初めて日刊スポーツの築地担当が出来たんですよ。個人的には築地の皆さんと仲良くしたりはしていました。でも全般的に築地をどうこうしていくことは、それまでも場内の人たちと話をしていて、やるにはやっていたんですよね。でも取材の上辺の付き合いの方が相当多く、もっと中にまで入ってどうこうみたいな感じはなかった。市場の築地に残る側は、移転後の場外をどうにかしようって話になっていました。

思わぬ相乗効果が生まれるときがある

野村

原作もののドラマってめちゃくちゃ多いじゃないですか。でもどんなにドラマがヒットして原作が売れても、別にテレビ局が追加で儲かるわけじゃないんですよね。もしかしたら良いお歳暮ぐらいはもらえるかも知れないですけど。FODのなかで書店を始めたのはそれがきっかけだったんですよ。つまり電子書店をやることでドラマがヒットすると原作もFODのなかで読める。原作も自分のところで商売が出来るということで始めたんですけど、思いの外他局ドラマの原作が売れている状況です。

この施策をやって分かるのが、もう今テレビを見ている人は録画で見ている人も結構いるんで、どこの局のドラマかすら気にしていない人も多いんですよね。そのためFODの来訪者を調べると、普通に他局の日テレのドラマやTBSのドラマが観られるつもりで来ている人もいるということが大きな発見でしたね、他局のドラマでも商売が出来たことは大きい収穫でしたね。

寺沢

映画なんかもそうでしたね。「翔んで埼玉」が映画になっているのはものすごい話なんだけど、実はパタリロを描いている魔夜峰央氏の短編マンガなんですよね。だってえらい短い作品でしょ。よくあれを探して来たなと思って。

野村

あれはすごいですね。

寺沢

まさか埼玉県知事選のポスターになるとは思わなかったですね。埼玉県民はDisられることに対して喜びを感じるんだろうな(笑)。

野村

だから自分たちが見るより、やっぱり埼玉県民が見たときの満足度のほうが凄く高いらしいですね。

寺沢

埼玉県の鳥がシラコバトというハトなんですけど、ちょっとちんちくりんなハトなんですよ。そのマークでガックンが決めポーズみたいなマークを作るわけです。

野村

「翔んで埼玉」はレンタルのみなんですが、しっかりFODの収益に貢献しています。

寺沢

絶対翔んで埼玉は見たいと思ったもん。あの映画はバカバカしいじゃないですか、だって埼玉解放戦線ですよ? 埼玉と東京の県境に荒川があるじゃないですか。荒川が東京都の国境なわけですよ。そうすると埼玉から東京へ入れたくない。田舎が伝染るから。それで○○スコープがあると埼玉県なのか都民なのかが分かるので、「県民が来たぞー」ともうそれで連れていかれてしまう。中にはすごい進学校があって、埼玉県民だけ豚箱みたいなところに教室があって勉強をしている。

野村

でも埼玉県民は千葉県民に対してすごいライバル心を持っているし、もう群馬はジャングルみたいな感じだし。

寺沢

さいたま市ってひらがなで書いてあるけれど、さいたま市と書いてある中に浦和を見たり大宮みたりする。大宮と浦和が一緒になってしまった時点で、埼玉県民のなかにはすごいイデオロギーの縮図がありますね。

平林

埼玉は大きいから西と東で全然ちがうもんね。

寺沢

縦のラインは鉄道があるからいいけど、東西のラインは繋がってないし、結局交通機関がないからそれもあってセクト化しているのかなって。関西は逆で横に繋がっているんですよね。阪急JR阪神とね。

野村

そうなんだ。

寺沢

そうです。横なんです。

奈良のほうが行きづらい。

野村

なるほど、たしかに。

寺沢

甲子園で待ち合わせようぜとなると、甲子園口で待ち合わせると歩かなきゃいけなかったりね。

野村

関西の神戸大阪京都みたく関東も横浜東京千葉みたいになればいいんでしょうね。でもちょっと千葉は遠いんですよね。

寺沢

千葉の人たちって、千葉の中で何か出来ると、千葉のものをものすごく応援するというか、郷土愛が強い。埼玉は郷土愛がない(笑)。横浜の場合はある程度のところで観光地がまとまっている。例えば山下公園から歩いて行ってフランス山に行き、港の見える丘公園から外人墓地へ行きながら、山手を降り中華街へ行くような散策コースが出来ますよね。大阪の場合はその一つ一つに行かなきゃいけないですからね。