二拠点生活をはじめたきっかけ

旅行で小笠原諸島に行ったんですよ。小笠原諸島には船で行くんですけど、行きも帰りも丸一日掛かるんですよね。飛行機も飛んでいないからなかなか行けないので、いつか行きたいと思っていたんですけど、去年の6月に一週間ほど小笠原諸島に行ったらやっぱり海がいいなと思ったんです。昔は海が好きでよく沖縄に行ってたんですけど、最近全然行ってなくて。それで小笠原諸島に一週間行って帰ってきたら、なんだか海に取りつかれてしまって、毎週末関東近郊の海に行きまくることに(笑)

千葉の外房にも行ったし、三浦半島の海もほとんど行ったし、いろいろ行ってるうちに結果として逗子が一番良いと思って。まず海がキレイ、街もいろいろ美味しいご飯があったり、ちょっとオシャレだったり。そこから逗子に遊びに行くようになったんです。昨年の8〜9月辺りに下手すると毎週末土日に逗子に行っていました。これだけ逗子に行くんだったらよっぽど馬が合うんだろうと思いまして。そして、これは買うしかないと一念発起して、地元の不動産会社に駆け込み、行ったその日に住むところも決めました。

ちなみに物件を決めた日は3件ほど内見したんですが、一つは戸建て、もうひとつはマンションタイプの物件を見て、それで3件目に今住んでいるところに来ました。ここはリゾート感もあって普通の住まいとは少し異なる雰囲気があって、土日の二拠点生活にはもってこいだなと思ったんです。そもそも中古物件を買ってリノベーションをしたいと思っていたこともあり、購入を決めたあと友人で設計デザインを行っている佐藤立体設計室の佐藤さんに頼んで、この部屋をリノベーションしてもらいました。

この部屋のテーマは「海の近くで読書する家」。そのテーマを意識してこの部屋をデザインしてくれました。リノベーションで部屋が完成して以来、土日はほぼ毎週逗子のこの部屋に来ていますね。土曜に来て日曜に帰るときもあるし、月曜にそのまま逗子から会社に出社する場合もあります。

ちょっと贅沢だけど、逗子は若干遠いので、平日は会社から近い東京の下町で暮らして、土日だけ逗子に来ている形です。下町は下町で文化があって歴史があって、ちょっと落語っぽい雰囲気がよくて。逗子は逗子で西海岸ぽい雰囲気が好きです。暮らしの中に両方の要素があることが自分にはいいと思っていて。そもそも、以前から2つの場所に住むのをやってみたかったってこともあるんですけどね。

出身やライフスタイルとの関係性

東京で住む前は名古屋だったんですが、名古屋に住んだのも小学三年生ぐらいからで、その前は盛岡だった。いわゆる転勤族だったんですよね。東京は大学から住んでいるから一番長いですね。でも東京の中でもいろんな場所を転々としています。東京の西側に住む機会が意外と多かったですね。永福町、久我山、三鷹、国分寺にも住みましたね。だから、ひとつのところにずっと住むより、いろんなところで暮らしたいという気持ちが根底にはあるのかもしれませんね。

そう考えると、仕事をするときは時間に追われているから会社の近くのほうが助かるけど、土日はちょっと時間があるから、逗子みたいな自然があるところでのんびりするほうが、自分のモードを切り変えることができて、いいんですよね。

この二拠点生活は、旅行とはまた違うんですよね。下町と逗子でそれぞれの暮らしが2つあるから。旅行はなんか非日常過ぎるじゃないですか。二拠点での暮らしには2つの日常がしっかりあって、それを一人の人間が行き来している感じが面白いんですよね。人は住むところによって性格や考え方も変わってくるから、下町だと江戸っ子っぽい考え方やキャラクター性が入ってくる。だけど土日で逗子に来ると、ちょっとオシャレなアメリカの西海岸に近い感じが入ってきて、それがまた面白いんです。さらにこれが三拠点あると、それは全然違うことになると思うんですよね。だから多拠点生活の良さは、人格をスイッチして暮らすことができる面白さなんだと思います。

今後もいくつか拠点を広げたい気がするけど、やっぱりもう家を買うのは無理だから(笑)、最近OYOとかあるじゃないですか? ああいうサービスを使うのは可能性があるのかなって思います。やっぱりいろんなところで暮らしたほうが楽しいと思うから。なるべく自分のペースで住むところを変えて、なるべくお金が掛からない方法で(笑)ちょっとここは無理しすぎました(笑)

落語との遭遇

落語を体験したのは社会人になってしばらくしてからで、落語を体験したことは大きな出来事でしたね。下町に流れる江戸の風がいいなと思ったのは、落語の影響が相当大きいと思います。もともと映画が好きで、そこから芝居を見るようになって、芝居ももちろん見ていたけど、何か他にも見たいと思ってたまたま浅草演芸ホールに酔った勢いで行ったら、そのとき体験した落語は超面白かった。演劇は舞台装置もあるし、キャストが何人もいるじゃないですか。一方落語はひとりでやっているし、そもそも舞台装置もないのに、ものすごくひきつけられて驚きました。そこから落語を聴きまくりましたね。

最初に体験したのは、林家正蔵師匠でした。浅草演芸ホールのしじみ売りってネタで枕も覚えてますね。「貧乏暇なしと言いますが、その先には続きがありまして、貧乏暇なししじみ売り」らしいんだけどそれは本当か分からないけど、「今日はそんなしじみ売りの話でございます」みたいな感じで始まって印象深かったな。

文化に触れるとか、物を考えるとか、知識を学んだり、本を読んだり、そういう文化的なことがずっと好きだったんですけど、いつしかそうした人間的過ぎるというか、人間脳を使いすぎているというか、そういうのにちょっと窮屈さを感じてきたんです。それで、40歳を過ぎた時に、暮らしに自然を入れないと生きていけないんじゃないかと思ったわけです。それは小笠原諸島に旅行したとき気づいたんですよね。そこでの、暮らしに自然が入ってくる感じがすごく良かったんですよね。

自然が多くある逗子に行って下町に戻ってくる感じが西海岸と東海岸を行き来している感じだと言いますか。江戸も一応入江ですからね(笑)

平日はニューヨークやボストンにいて、土日はカルフォルニアにいるみたいなそういう感じがあるんです。ちょっと言い過ぎですかね(笑)。