毎月行かれている刑務所の話も気になります

ある刑務所には10人ぐらい無期懲役の受刑者がおる。その刑務所にコミュニケーションの授業に行き、刑務官に何の話をしましょうかね?と聞いたら、取り敢えずここで怪我したり病気になると面倒見るのが大変やから、ピンピンしといてくれと言ってください、刑務所生活はエンジョイですねと言った。それは言って良いんですかと聞くと、竹中先生なら言っていいですよと言われた。だから皆さんに開口一番「エンジョイしてますかー!」と言った。「怪我したり病気をしたらロクなことがないですよ。みんな健康で!」と。そんな話を1時間30分ぐらい話して。それで評判が良かったから、2回目にも呼ばれた。

刑務所では、どんな反応が返ってくるんですか?

無期懲役の人はちょっと明るいんですよ。中には仮釈放をもらえるんですが無期の場合は少なくとも30年は掛るようですわ。仮釈放をもらうには引き受け手がいたり、仕事が決まるとか。中にいるときはお行儀も良くないとあかんのです。それがない人は満期までいるんですよ。だからその人たちはしおらしくしているけど、基本的には緊張をめちゃめちゃしているんですよ。出所の日は誰も迎えに来ないし、仕事も決まってないけど、出所するとその瞬間に「はい、さようなら」となる。刑務所も出ていくときって「バス停、右やで」みたいなことしか教えないんですよ。何時と何時にバスが来るからバス乗って行きだけで、ハイサヨウナラですよ。そのあと僕はどこに行って何をしますなんて報告もせんでいいんですよ。娑婆に出るってそういうことなんです。そこで出所前の約1ヶ月、社会復帰プログラムを受けるわけです。電車の自動改札機や交通系カードの使い方や、スーパーのチラシを見せて、食材の値段を知らせたり。ボクはそこでコミュ二ケーションの先生を毎月4時間やっています。

それって、すごく不安ですよね?

不安だらけ。だから緊張もしているし、人間関係で嫌いな人も仲良くなれる人もいっぱいおるやろうけど、ボクの授業ではあいさつしたり、今年も阪神、弱いでもいいし、最近美味しいもん何食べましたでもええから、コミュニケーションには何かそんな感じやでと慣らし運転するんです。でもずっと受刑者は出所できる日のことを、刑務所に入った日から考えているらしいですよ。入った途端に出て何をしようって考えるんです。でもそんなことをおくびにも出さないわけです。ずっと歳下みたいな刑務官に番号で呼び捨てられて、でもああいうところやから、それは大事やと思うんですよ。受刑者はいろんな作業で仕事をしてますから、作業中に喋っていて怪我してもしゃあないですからね。ボクは厳しくて当たり前だと思います。時間給は報奨金という形で出るんですけど、なんぼやと思います? 入所したての頃は1時間で言うと6円ですよ。だから月給やと800円。でも寝るところ付いてごはんも食べられるしね。

そのお金の使いみちはどうなるんですか?

受刑者が自分の靴を買うときなど、それもランクによるんですよ。真面目じゃなかったらいい靴も買えないし、パンツもほんまにお金ないやつだと、使いまわしのパンツが回ってくるんです。やっぱりみんなそれは嫌がるから、自分のものを欲しがるんですよ。そういうときにその金は使うんです。あとは身内からお金の差し入れも出来るんです。国庫預かりになるんですけど、仕事代も入るし身内からのお金もそこに入る。十年以上いたら数十万ぐらいじゃないですかね。

刑務所の仕事はいつからやってるんですか?

吉本を辞めるちょっと前からやり始めていたんです。吉本を辞めるからその仕事も吉本に譲ったんです。それで吉本も出来ないとなったから、刑務所に断りに行ったんです。僕も吉本を去るんでもう来ませんと。そうしたら、そんなこと言わんとってとなって。ちょうどその前に法律も変わり、刑務所が矯正施設として生まれ変わるための教育に、力を入れ始めたときやったから、僕らみたいな民間人が先生になれたんです。日本中で何にも資格なく喋っているのは、僕ぐらいしかいない。結局赤字ですけどね。交通費とホテル代と弁当代も自分で払ってますねん。まあ謝礼も出るようになりましたが、基本的にボランティアでちょっとプラス、ちょっとマイナスぐらいやけども、もう毎月通って6年です。毎月受刑者のキャラクターも変わるから、なぞなぞを出しても毎回盛り上がるところが違うんですよ。この刑務所はざっくばらんな感じが中には十数年、受刑者にはないんですよ。もちろん昼休みに雑談できる時間もあるんですよ。それはやっぱり先輩でうるさいやつがおったり、刑務官の目もあるから、そんなにグダグダになってられない。

毎月通っている山形刑務所の人は初犯で刑期が長い人たち多いので、、暴力団員は一人もいないんです。暴力団は1回目の犯罪でもう累犯という扱いになっているので、山形には来れないんです。でも山形にも全身入れ墨が入っている人がいるんですよ。この前も運動会でいたんです。それで聞いたら「あれはファッションタトゥーですね」って(笑)。今年の運動会も800人ぐらい出てきてましたけど、声出して応援するのって年にその日だけですよ。あとは花見があるんですね。年間の楽しみはそれぐらい。最近は他の刑務所にも行くことも増えましたね。男子だけでなく、女子刑務所にも研修で行きました。

余白について感じることを教えてください

僕はもうサラリーマンを辞めてから、遊びのあいだに仕事をしているんですよね。もちろん時間的には仕事が多いんですよ。でも僕のなかの見え方は、遊びがありでたまに仕事をしようってしているんですね。今までは仕事のあいだに休みを探したでしょ。この考え方を変えたんですよ。だから曜日だけだと土曜と日曜でラジオの仕事をすると決めたら、土日は休めないわけ。その日は何処へ出かけて行っても混んでるわけでしょ。だから人が遊びに行っているときは働く。人が休んでいるときに僕は働くでええわみたいに考える。そうすると最近なんぼ考えても不思議なのは、会社員は毎日会社に用事があるわけでしょ。でも今のボクは「用事がないわ」となると朝から暇なわけでしょ。それこそ今日原稿を書かないと決めたら、朝から餃子食ってビールを飲んでもいいわけでしょ。サラリーマンだったらあかんわけでしょ。毎日延々とあるわけでしょ。株式会社はすごいところですよね。会社に行く人の中でほんまに今日することない人もいるはずですよ。でも全員時間通りに来てますよね。

あれもういっぺん働き方改革をやったら、そういう人たちはもっと自分の時間を作って、趣味をやるとか別の仕事をするとか出来るはずですよ。一日8時間を月ー金で拘束しているのはすごいですよ。そんなに世の中仕事があるんですかね。忙しい人は忙しいと思いますよ。忙しくないやつも絶対おるはずですよね。時間通り行って時間通り帰ったら金くれるって仕組みをもうちょっと変えないと、いま見ている限りは日本が活気づかないですね。

効率重視ということだけでもないとは思うんですけどね。効率重視の向こうに自分の時間の使いかたがもう少し絡み合うと、日本人はもっと元気になるし、変わると思うんですけどね。今もなんか貧しいというか、どこかで精神的にきゅうきゅうに押し込まれているんですかね。

どう一歩を踏み出すべきか

不安なんでしょうね。何も出来ひんと思ってるんでしょ。だけど結局はこの前までどこかの部長で偉そうにしてたわけでしょ。そんなやつは放り出したらいいわけですよ。

それまでに経験してきた仕事やその能力が使えないかなとか、しんどいのが嫌と思うわけでしょ。労働はしんどいに決まってますよ。それは相性じゃないですか。好きなことなら一生懸命できるし、全然初めてでも興味があれば、勉強して覚えたらいいじゃないですか。それで早くそっち側の欲求に切り替えないと、立場やキャリア年収と言ったときは、ぎゅうぎゅうになって動かれへんかもしれない。僕は50代が変わらなあかんと思いますね。ジジイがこれからもっと増えるわけですから。コンビニで若いやつを怒鳴っている場合じゃないですよ。そのエネルギーをほんまにどっかへ持って行けですよ。もっと働けですよ。もしくはもっと遊べ!ですよ。