いま地元は意識していますか?

ふるさと納税だったり、それこそ湘南ゴールドのつながりだったり、湘南ゴールド自体が神奈川が推している果物なんですよね。それを使っているビールということで結構重宝されています。あと、湘南ベルマーレさんとのつながりであったり、去年からベーカリー&ビア ブッチャーズさんでもサンクトガーレンのビールが取り扱われるようになりました。だから地元をちょっとずつ意識するようにはなりましたね。以前は厚木のお祭りでビールを売っても全然売れなかったんですよ。本当に売れなくってすごい悔しい思いをしていた時期もあった。ある年、思い切ってビールの値段を下げて、大手ビールと同じ価格で売ってみたんです。赤字覚悟で。同じ値段ならどっちを飲むの?と試してみたかったのもあります。その年から流れが変わりました。お客さんが手に取ってくれて、良さを分かるようになってくれました。

体験してもらうまでのハードルの高さ

手に取ってもらうのはすごく難しいですよね。あまり安売りはしたくないから、そこがスゴく難しいですよね。でもハードルを下げるのはたぶん多少そういう努力をしなきゃいけないんですよね。いきなり何も知らない人がIPAを飲んでしまうと、その苦さにビックリしてしまったり、このビールは苦過ぎておかしいって思う人もいると思うんです。IPAは強い苦味が特徴のビールだってことや、これがクラフトビールの全てじゃないってことも併せて伝えないといけません。

うちはけっこう両極端のラインナップで、IPAもYOKOHAMA XPAというIPAのビールを作っていますし、それはワールド・ビア・アワードの大会のIPA部門で金賞を2回獲っているんで、IPAもちゃんとおいしいものを作っています。その一方でフルーツビールも作っているので、本当にビールがすごい好きな人向けと、クラフトビールの入り口になりやすいものが両方あります。その辺はすごくバランスを取ってやっていると思うんですけどね。

一升瓶ビールはどんなきっかけで生まれたんですか?

あれはもともとお客さんからがきっかけです。結婚式にビールを使いたいけど、クラフトビール各社がメインで使っている小瓶は一人分なんですよね。だからお酌が出来るように、もうちょっと大きいサイズが欲しいなと言われたのが始まりです。でも大手と同じようなことをするのが嫌だったという経緯もあって、一升瓶ビールは始まりました。

いま抱えているジレンマ

ジレンマはすごくあります。海外に輸出という手もあるんですけど、結局なぜクラフトビールをはじめたのか、サンクトガーレンはスタートがアメリカで、そこから日本に来てるんですよ。もともと日本にクラフトビールがなくて、アメリカでそれを知って日本に広めたいと始めたのに、海外に輸出するのは少し違う気がするんですよね。

海外だとクラフトビールにすごく理解があるので売りやすいんですよね。海外の人はすごく量も飲むんで。だからある程度の量は売れるんですけど、何のためにクラフトビールを始めたのかという原点に立ち返っちゃうんですよね。

だから今、すごく会社的には悩ましい時期に来ています。これ以上人を入れてもっと大きくすると、缶ビールに進出することも検討しないといけないだろうなぁと。クラフトビールの小瓶ってメーカーによって高さも太さもバラバラじゃないですか?でも、缶って大手も含めてサイズが各社同じなので、売り場の棚がとりやすいんですよ。

サンクトガーレンはもともと社長がひとりでやっていて、クラフトビールを広めたい、社長の作りたいビールがあってやっていたんですよ。缶ビールになると工業製品化していくじゃないですか。そうするとやっぱりそれがやりたいことだったのか問題もあって。これ以上、大きくすることを目標にするのか、その辺がいまけっこう悩ましい時期にはきています。生産量はもう現状ギリギリではあるので、でも現状維持は衰退と同じなので、何か考えて行かなきゃいけないんですけど、なかなかその答えが見つかって無いような感じなんですよね。

あと人をどんどん増やすことにも迷いはありますね。最近業界に入ってくる人たちはクラフトビールがどん底の時代を知らないんですよね。
クラフトビールが樽生で飲める店は全国に片手で数えるほどしかなくて、スーパーにも全然並べてもらえなくて、どこで売ったらいいんだ!という時代を。
今では少し足を伸ばせばクラフトビールが樽生で飲める店があって、コンビニでもクラフトビールが買えるじゃないですか。
スタートラインが全然違うんですよね。
そういう人たちをどんどん入れてサンクトガーレンがサンクトガーレンのままでいられるのか、と思ってしまうんですよね。

配送料もどんどん上がっていて、クラフトビールはクール便を使うものが多いんですけど、結局それじゃあ酵母を取り除いて常温でできるようなものにしないと、もう採算としては難しい。そこもそういうものを作りたかったのかと言われると、答えはNoで。

ちょっとづつ新しいことをやるんですけど、会社としての大きな方向性が、結構悩ましい時期ですね。

けっこうメディアにも今はクラフトビールの話題が出ているけど、メディアも新しいところを取り上げがちなんですよ。うちは最老舗なんで、やっぱりどうしても昔に比べるとどうしてもメディア露出は減ってきているんですよ。そういうのも結局うちは営業もいなくて広告費も使わないなか、PRの手法だけでやってきたので、そこもちょっと考えていかないといけないですね。

300社集まっても、シェアの1%しか取れていない現実

そうなんですよね。だから結局そこのすごく狭いところを300社で取り合っていて、他の超でかいところを大手5社で分け合っていて、すごく歪な構造ですよね。

けっこうスポーツはそうやってその1社独占みたいなことはすごいんですよ。サッカーもそうじゃないですか。それでうちがベルマーレさんに声をかけていただいたのは、実はけっこう業界的にはすごいことが始まったという感じで、すごく注目されました。今ベルマーレさんとお付き合いをして10年なんですけど、やっとほかのチームが、同じような取り組みをやりたいということで、地方のブルワリーに声掛けが始まっています。

清水エスパルスが実際に地元のクラフトビールと一緒にやりはじめて、あとプロ野球の楽天イーグルスも東北のブルワリーと組んで、イーグルスビールを出しています。DeNAのビールにしても、あそこは球場も自分たちで運営することで、大手の広告を入れていないから出来る手法ですよね。ベルマーレさんも結局そうなんですよ。Shonan BMW スタジアム平塚に大手ビールメーカーのスポンサーが入ってないんで出来る。競技場に大手スポンサーが入っていると、やっぱりそこのストップが掛かってしまって難しい。今やっとそういう感じで、10年経ってうちのような成功事例が出来たことで、地方に同じようなモデルが普及していっているのはすごいですよね。そういうものがもっと盛り上がっていくと、ゆくゆくはもっとビールシェアを取れたりするのかなと。

ベルマーレビールも最初の年は、今年だけの契約というので、例えばJリーグそのものに大手ビールのスポンサーが入ったらダメですと毎年言われていて、今年は大丈夫です、今年は大丈夫ですときて、やっと認知されてきました。もうさすがにそういうものが入ってきても、ここで切ったら逆にお客さんが何でですかとなるので、もう多分切れないだろうなというところまでは継続が出来ていますよね。結構当たり前のことを当たり前のように、とことんやるみたいな感じですかね。

でもベルマーレさんと関わって、ベルマーレビールをやらせてもらえるようになったのは大きかったかも知れないです。サッカーサポーターの人たちにも広く認知していただけるきっかけになったので、それも一つの転機だったかも知れない。

アイデアのインプットはどうしていますか?

結構SNSだったり、あとは新しいビールのヒントはカフェだったりします。例えばスターバックスで毎年seasonalのものが出るじゃないですか。それは毎回飲んでるし実際チョコレートのビールは本当に毎シーズン、バレンタイン売り場に行って、すごく買い込みます。同じビールを参考にするよりも、違う業種のものを参考にすることが多いです。結局同じことをやっても真似になっちゃうので。結構ほかの業界から参考になるものを探しますね。

広報には、飛び道具があると思われますよね

そうなんですよ! すごくいろいろ聞かれるんですけど、本当に結構見えている部分はすごく華やかで、飛び道具を使っているかのようなんですけど、結構やっぱりやっていることはすごく泥臭いわけです。