パンを作るということ

パンを作るとき、失敗したらどうですか?

大宗

ショックですよ。相当ショックです。主にコンクールの試作の時などに、相当出来が悪かったりしたら、その場から隠します。捨てるのはもったいないので取っておきますが、気分入れ替えてこようと思って外から戻ってきて、目の前にあるとガッカリするんで見えない場所におきます。時間を置いて、気持ちを落ち着けてから、うまくいかなかった原因を冷静に分析するようにしています。

専門学校にも課外活動でパンを教えに行っていて、いつも話していることがあるんですが、僕は先生だけど先生じゃないし、お客様を相手にする仕事をいまホテルのベーカリーでやっていると。お客様に対してどう誠実であるかを、パン作りに置き換えて、ダメなものはダメだと言うからねと、言い方を気をつけながら教えてます。実際に作ったパンを用いながら、考えたりするのが、私の授業です。

極端に言うと、お客様に買ってもらえるパンを作らないと仕事だから売れ残ったら給料ないんだよという話をします。それがベーカリーの仕事ですよ。作ったらそれで終わりじゃなくて、作って買っていただいて食べていただいて、そこでしっかり完結する。それで美味しいと言ってもらって、また買いに来てもらうというサイクルを作って行かないといけない。作って終わりじゃなくて、買って食べてもらうまでをしっかり考えないといけない。僕が良くしていただいている人に最初に言っていただいた言葉を生徒にも伝えています。

パン作りに没頭することもありますよね?

大宗

ありますね。帰り時間が遅くなる分、家に居る時間がやっぱり少ない。パンのコンクール等に出場する際の準備期間は特に遅くなります。朝は子供たちが寝ている時に出て、夜は子どもたちが寝たころに帰るので、触れ合う時間も少ない。僕の場合は、家族が応援してくれるような環境にあったので、それは良かったです。

パンを作るだけではなく、その先をイメージすること

イメージが大事になってきています。僕はいつも思うんですけど、我々のショップは厨房と離れているので、お客様の顔が直接見えない。だから商品がどうお客様に見えているのか、どういう気持ちで買ってもらえているのか、どういう気持ちで食べてもらえているのかをちゃんとイメージしながら業務に当たるようにしています。

仕事を俯瞰することも大事ですよね?

大宗

そうかも知れないですね。フロアを1つ上がれば違う世界なので、そういった外からの刺激というのは、ホテルで働いていると気づきやすいかなとは思います。でもこれは単純に気づきだと思うので。気づかない人は気づかないし。

それって会社に入ってすぐ気づいたんですか?

大宗

分からないです。まだ気づいていないこともあるかもしれないです。新卒採用で横浜ベイシェラトンホテル &タワーズに入社して、ベーカリー以外の先輩に厨房に呼んでもらい、見せてもらったことがきっかけで、、それから時間をつくって違うセクションに行くようにしてたので。自分で気づいてそれをしようと思ったのは、働き始めて半年ぐらいからだと思います。ホテルは気づいたらすぐ行動出来る環境ですよね。

パンを作り、それをまた継承する意味

まずはベーカーの自分としては、知らないことがいっぱいあることだけは分かっています。でも知らないことや出来ないことを、見つけていかないといけない。それでそれを知れたら、そこの部分はベーカーとして広がりますし、パンだけじゃない人間としての幅も広がっていくと思っています。

それも前々から思っていることですか?

大宗

そうですね。知らないことを知る努力はずっと取り組んでいます。出来ないことを出来ないままにしない、出来ないことをしっかり見つけることが大事。

僕はより何千年と繋いできたパンという歴史を未来に繋ぐ歯車の1つだから、未来にちゃんとつなげていきたいと思ってます。そう思うようになったのは、娘が将来パン屋さんになると言ってることがきっかけです。おそらく本当にはならないとは思ってますけど(笑)。

でもそういうパン屋さんになりたい、パンを作りたいという想いを未来につなぐ役割を、今僕が本当に担っているのかなと思っています。だからフランスの伝統を重んじて守るべきところは守って、自分の味を出すというスタイルはすごく共感できますし、守ってきた伝統を未来にしっかり繋いでいく役割を果たせられたらいいかなと思っています。その上で守ってきた伝統をしっかり知らないといけないので、やはりずっと勉強し続けなければならないと思います。