仕事のメインは映像なんですか?

はい、メインは映像制作です。ただ、最近は表現のアウトプットを気にせずやりたいなと思っています。音楽やパフォーマンス、空間インスタレーションはこれまでもやってきましたが、ここ最近はロボットやプロダクトなどの手で触れるモノにも興味があります。

ある衝撃的なロボット

先日つくばの研究者4人とアーティスト4人でハッカソンをやったんですよ。僕は筑波大学でソフトロボティクス研究されている望山先生とペアになりました。ソフトロボティクスってめちゃくちゃ面白い分野で、今までは硬いロボット、いわゆる同じ製品を1日に何千個・何万個作るみたいな正確さがロボットには求められていたじゃないですか。

ソフトロボティクスはもう少し生物に近い印象で、柔らかい素材で出来ていて、ロボット自体も自分で伸びたり拡張したりカタチを変えていきます。そういう新しいジャンルを研究されている望山先生と「食べるロボット」を作りました。それは「Dying Robots」という作品です。ロボットって基本的に無機物で出来ているわけですけど、この作品のロボットを有機物で作り、それをぬか床に入れておくって作品なんです。

数年前にソフトバンクのペッパー君が大量返却で話題になって、電気の切れたペッパーくんの寂しい姿を見たら、すごく何かグッとくるものがあった。返却された後はどこに行ってしまうんだろうって。もしロボットに寿命があって、体も朽ちていく事が出来たら、人間との関係はどう変わるんだろうとぼんやりと考えていました。

この作品はロボットを通して、生と死を考える作品でもあります。最終的には動いているロボットを食べるのですが、食べる際は、魚を食べるみたいに所作があって、食べれないパーツはガラ入れに入れるんですよ。これでまたパーツを変えて、それをぬか床に入れます。大きく人間を介在した循環が起きている。共生というのが一つのテーマでした。

リアルとアンリアルの考え方

リアルなのに、”リアルじゃない”みたいな事例で、興味深い話があると伺いました。

くろやなぎ

何かの記事で読んだと思うのですが、リアルはアンリアルという話です。ある女の子が写真家に自分のポートレートを撮ってほしいと頼んだんですよ。プロのカメラマンがすごくきれいな光でその子を撮ってあげた。でも女の子は出来上がりを見てこれは私じゃないと言った。その子にとって「私」は加工された「私」が「私」なんです。そういう話を聞くと彼女たちのリアルってもう”リアル”じゃないんです。映像になったときのリアルも、別のやっぱりアバター的なリアルがたぶんそれぞれにある。すでにそういう価値観をみんな持っているんですよね。

フィルターされていないといけないんですか?

くろやなぎ

そうですね。対面したときはいいんですけど、それがインターネットを介するときは、自分に何かしらエフェクトが掛かっていないと、そのメディアでは自分ではない。

平林

彼女たちにとっては、インターネットのリアルとは別世界での自分のリアルで、いわゆる本当のリアルな世界は、彼女達にとっては、リアルじゃなくなってきているのかも知れないですね。

くろやなぎ

みんな表現したいし、表現と自分のプライバシーが混ざってくるといろんなハードルが出てくるけど、仮の姿だとを自分の文脈とは切り離して何でも出来てしまうんです。例えば障がいを持った方でVtuberをやっている方がいて、そういうシーンはすごく良いですよね。リアルだと無意識に偏見ってフィルター掛かっちゃうけど、フィルターが一律になれば誰でも見やすくなるし、身体的な違いを気にしなくなるんですよね。

話は少しそれるけど、写真で言うと「GAN」というAIのモデルを使うと、実在しない架空のポートレートが自動で生成されるんです。精度が高くて、実在する人物かどうか判別できないところまできている。現実と虚構のボーダーがより曖昧になってきてて、リアルって何だろうかと考えさせられますね。

この技術を使えば、カメラを使わずにフォトグラファーという職業が成り立つかもしれない(笑)

平林

この世界には、人の顔ってこんなにたくさんあるのに、なぜ一つも同じ顔がいないんでしょうね?

くろやなぎ

やっぱり僕らの解像度が高いからじゃないですかね。でも人種が違うと同じような顔に見えたりするじゃないですか。自分たちはアジア人の顔は区別できるけど、遠い国の人の顔は解像度が低くて見分けがつきにくくなる。

ちなみに、この「GAN」の技術で出来たポートレートには肖像権がない、それが画期的ですよね。

僕はこの「GAN」を使ってGOD GANを作りたいと思っています。世界中にはいろんな神様がいるじゃないですか。その神様たちの画像を収集して、1つの神を作りたいなと思っていて(笑)。

GOD GANを作れば、神も顔も時代と共にアップデートを繰り返し、一つにまとまらずどんどん変化していく。例えばさっきのGANで作られた人たちが信者になる形があれば、信者が永遠と作られていき、それが永遠と増えていくバーチャル上のでっかい宗教を妄想してます(笑)。