明確に仕事内容が分かれているわけではない

妹尾

シナリオを書くのは小沢ですけど、プロットまでは打ち合わせながら一緒に作ります。作画も、背景や設定という美術の部分は、小沢が担当しています。だから、作画、シナリオという肩書ほどには明確に分業はしていないですね。

小沢

シナリオを書き終わったから、あとは散歩でもしてるね、というわけにもいかないんですよ。

最近、新たな連載「東京トイボクシーズ」を始めてますよね

妹尾

はい。いま新しく始めた連載では、はじめて本格的な学園モノをやってます。学園モノは自分に10代の子どもがいるうちに出来ると良いんじゃないと前から考えてて。

小沢

もういい加減、我々が自分たちが学生だったころの記憶ではリアルな学校を描けないんですよ。

妹尾

あと、いままでは子供が小さすぎたというのもあったかも。同世代の少女漫画家さんがこぼしてたんですよ。育児をしながら、ずっと恋愛物を少女漫画で描いてきたけど、もう扶養家族の恋愛なんてどうでもいいって。その感じ、すっごく分かるなって思いました。未就学児童を育てることと10代の学園生活って、ある意味最も距離がある。

実際にお子さんもいてリアルに感じる状況として、どんな違いを感じながら学園モノを描いているのでしょう?

小沢

どっちかと言うと、我々は先生の気持ちの方を分かってしまう世代になっているわけじゃないですか。そういう世代的な違いもあるし、そもそもの子どもたちの考え方も変わっている。もちろん昔と比べて学校の仕組みも変わっている。

取材対象が身近なのは助かります。学校行事や面談なんかもすべて取材気分です。おかげで今どきの学校のこともだいぶ詳しくなってきました。
昔の我々のときにたくさんいたパワハラやモラハラでゴリゴリと子供を押さえ込むような先生は、ずいぶん少なくなっている印象です。それゆえに見えてくる根本的な問題はありますけど。

妹尾

まだ私たちより上の世代の先生だと、昔ながらのタイプの先生もまだちらほらいるんですけど、若い先生はいいよね。

小沢

そう。とくに今の20~30代はものすごく優秀な先生が多い。少なくとも子供たちの担任をした先生方は、みんないい先生でした。狭い観測範囲なので、運がいいのか世代的な傾向なのかは断言できないですけど、ただ随分印象は違う。子供たちに聞いても「先生好きー」とうれしそうに言ってます。
その辺をある程度踏まえたリアリティで、今のトイボクシーズは描いてます。ちなみにトイボクシーズは、子どもでも読めるように総ルビにしてあるんですよ。

お二人とも漫画という仕事に携わっているわけですが、お子さんは同じような職業になりたいとか、何か感じるものはあるんでしょうか?

妹尾

絵を描くのは好きみたいだけど、クラスの中で絵を描くのが好きな子はけっこういるみたいだし、先のことは(笑) 親としては、職業として絵を描くことを薦めもしないし、止めもしてません。描くのは楽しいよね、とは言うし、描いたものの良いところも褒めますけど。

小沢

「ふつう」が何を指すのかはさておき、「ふつう」よりは会社員になるという指向は持たないまんま、成長していく可能性は高いのかも。身の回りに、漫画家はじめフリーランスの大人が圧倒的に多い。会社で働いている人も、自分で起業した会社だったり、働き方がフリーランス的だったり。

妹尾

保育園もスーツ着てくるお父さん、ほんと少なかった。小さい頃、子どもが「○○ちゃんのお父さんって、毎朝電車に乗ってるんだって! すごいよね!」って驚いてたことあったし。

小沢

やっと入れた保育園が、駅から遠い場所だったから、通勤するには不便な場所で、お店をやっている人だったり個人事業主がすごく多かったんですよ。

妹尾

そういえば、今通っている小学校の親御さんもなかなかバラエティに富んでます。子供と同じクラスの親御さんだけでも、役者さん、アナウンサーさん、植木屋さん、翻訳家さんとかとか、他にもたくさん。違う学年だけど、イラストレーターさんもいたか。

小沢

そういう環境なので、いろんなパターンで仕事をする大人をたくさん見ている。その影響はいつか出るかもしれないですねー。

ただ、我が家の環境に限っていうと、子どもからすると、我々の生活は、羨ましさを通り越して、多少引いている感じはあるみたいです。一日中漫画描いて、ゲームをやって、漫画を読んでるように見えてるようで、何それ? ちゃんと働いて、みたいな。

妹尾

私は埋立地の団地で育ったので、基本的にみんな電車に乗っているお父さんしかいなかった環境でした。自営とか全くいなかったにもかかわらず、こうなりましたが(笑)

十中八九では、「余白」が1つテーマとしてあります。「余白」という言葉にどんなことを感じますか?

小沢

物理的な余白と時間的な余白がありますよね。物理的な余白はともかくとして、時間的な余白があるとだいぶ不安かも。僕、ボーッとするのが下手なんですよ。

これはよく使う例えなんですけど、子供が1人をお手玉1個に例えます。お手玉を1個投げて、お手玉だからそれを掴まえてまた投げるわけだけど、そこに仕事という玉が加わると、投げるお手玉は2個になる。まだ2個だと両手で持ってられるんですよ。

それが子供がもうひとり生まれ、他に仕事が増えたり、やらなきゃいけないことが増えてくると、一気にお手玉が5個とか6個になってくるので、そうするとどこにも余白がないんですよね。そういう形で今でも自分たちの生活をくみ上げちゃってる。ところがポーンと半日空いちゃうことが、2年に1回ぐらい稀にあるわけです。

例えば予定がドタキャンになったり、締め切りが延びたり。すると逆に焦る。どうしていいかわからない。

突然予定が出来たときは、そこにサッと予定を入れたりしますか?

妹尾

私はわりと平気で、一人でじっくり心ゆくまで漫画を読んだりして、幸せに過ごします(笑)

小沢

僕は苦手です!

妹尾

そういうときの小沢は、ほんと落ち着きなくてひどいですよ。

小沢

移動のときも、読まなきゃいけない本か、やらなきゃいけないゲームを必ず用意してるほうなので。

妹尾

たしかに私も子どもの習い事に付いて行って、1時間ほど待っていることがたまにあるんですけど、それくらいだと、iPadで仕事したりして、完全に時間を埋めちゃいますね。

小沢

貧乏性なんです(笑)。