LRTといえば富山のイメージがありますが

富山も上手くいっている部分と弊害が出ている部分はあるんですけど、それなりに成功しています。富山もそうですし、それ以前に広島が路面電車はすごいですよね。あれだけ路面電車が高頻度で走ってバスと上手く連動して街が発展していっている都市はなかなかなくて、世界にも誇れると思います。札幌の路面電車も延伸してぐるっと環状運転出来るようになったんですけど、それで路面電車があることに行政なり街の人たちが馴染み始めて、街が変わっていってるんです。

富山はLRTとともにコンパクトシティの取り組みもやっていっています。コンパクトシティも本当に大事な考えですよね。個人の生活スタイルを尊重するという意味では逆行するのかもしれないですけど、でもちょっとずつみんなが妥協しながらトータルで暮らしやすくしていって、上手くやっていこうとしています。

富山はそういう意味で、富山市長がリーダーシップを発揮して展開していったことはすごく強かった。これが他の都市だと、交通政策は交通政策の人がやって、だけどそれに伴って必要な土地問題は別のところが、街づくりに関しては全然違う部局がやる。うまくかみ合って機能してないんですよね。

ブラジルにクリチバという町があって、それほど豊かではない都市なんですけど、1970年代に交通政策を全面的に任された人が、交通面ではBRTの整備とかそれに伴った道路の整備、街の整備をトップダウンで強力に推進しましたし、それだけでなくそこに住む人のインフラ整備や雇用の創出、子供たちの貧困・教育問題、ごみ問題などを全部署が横断する体制でやりました。それが交通政策だけでなく、都市づくりのモデルとして50年ぐらい経っても語り継がれているんですけど、それぐらい街づくりはイニシアチブを取ってやっていかなければいけないような問題なんです。

そういった動きは、大都市よりも中規模の都市のほうが有効になってきている感じがある。富山もそうですね。あとはなかなか続いていないんですけどね。

地方の鉄道事例で興味深いものがあれば教えてください

一つ面白い事例として挙げるのであれば、福井で15年ぐらい前なんですが、京福電鉄が半年間に電車が2回正面衝突をして、運行停止になったんですね。この京福電鉄はものすごく赤字で、鉄道事業を止めたがっていたんです。地元の人も、自分たちは車で移動して使わないから、そんなところに補助金なり赤字補てんのお金を入れるのは無駄じゃないかと。要は存廃問題を議論している最中に事故が起きて、言ってみれば廃線になってしまったような状態になった。世論はそのまま鉄道を廃止にする流れだったんですが、その年の冬にけっこうな大雪が降って、道路が麻痺したんです。それまで鉄道で動いていた人が車で移動するようになって、数百台、数千台という車が道路に増えたんですね。朝のラッシュに起こった渋滞が夕方まで残るような状態で、会社にも学校にも行けなかった。街の人たちは、自分は使わないけどこの鉄道は必要なんだということに、そこで気が付いたんです。

今では京福電鉄から自治体の支援が入ったえちぜん鉄道に変わり、復活してもう15年以上が経過しました。まだ自治体からの補助も入っているんですけど、これをもう必要ないという人はたぶんいないんですよ。そうやって自分は使わないけど、街のためにあるいは自分が移動するために必要なものなんだということを認識したんですね。壮大な社会実験をして分かったんです。これはなかなかレアなケースで、僕も講演などでよく取り上げるんですけど、実際そういうケースに出くわさないと分からない。本来は、そんな状況になったときには手遅れなんですよね。そういうケースをいろんな人に知ってもらいたい。

北海道は本当に鉄道危機なんですか?

僕はよくたとえ話で、北海道は稚内まで宗谷本線が延びてますけど、あれを途中までで無くして稚内まで鉄道が無くなったら他の国が攻めてくるんじゃないかって言ってるんです。もちろん冗談なんですけど、鉄道は言ってみれば道路が止まったときのもうひとつの命綱ですよね。自分の国土さえそうやって万人が使える交通手段を切って捨てるような国を、他の国はどう見るかって話で。そういう意味でも、国土を考えたときに鉄道は無くしちゃいけないんですよ。

去年なんか広島の豪雨災害が起こって、山陽本線が止まったときに貨物列車が山陰線を迂回したりとか、東日本大震災では東北線が使えなかったので、石油を運ぶ貨物列車を磐越西線経由で臨時に動かしたりとか、これって赤字でどうしようもない路線だけど、やっぱりあることで何か有事のときに絶対機能するんですよね。一本しか動脈がなかったらそれが詰まれば死んじゃうわけで、そういう意味では道路も一本あればいいわけじゃないし、鉄道もないといけないし、それを上手くインフラとして維持・整備していく必要があると思います。

今だと道東の観光振興にJR北海道や東急、ウィラーが手を組んで新しい取り組みをしてますが、そういう連携が出来ていけば僕は北海道は立ち直れると思っているんですけど、大前提として国なり自治体がそれ相応の支出をしてインフラを守っていかないといけない。

鉄道が真のインフラになるためには?

2016年にJR九州が株式上場したんですけど、同社の鉄道事業の営業収益は全体の半分以下なんです。利益面では、鉄道事業は1度も黒字になったことがなかった。それでも会社全体で黒字を積み重ねて株式上場を果たした。そこを突き詰めて考えると、日本は鉄道経営者がものすごく優秀だったから鉄道以外のところで埋め合わせをしていって、それが成功してしまったからこういう会社の形態になっている。廃線問題が持ち上がった時に、自治体や利用者が鉄道を残す責任とか言いますけど、企業にしてみれば赤字部門を廃止するのは当然なわけで。

鉄道事業が赤字なのはインフラのお金が莫大に掛かり、固定資産税もばかにならない。メンテナンスの費用ももちろん掛かります。駅を高架にするにも何百億のお金が掛かるわけです。そもそも線路を高架にする鉄道会社のメリットなんてそんなにないわけですよ。何でやるかというと街が分断化されているからとか踏切があって困るとか、鉄道会社の外側の事情が大きい。それでも、安全面や街の発展とかを考えて、全国で高架化が進んでいるんです。高架化で踏切がなくなると人の流れが活発になったり、渋滞や事故も減らせるので、高架化には国や自治体が補助を出すことも多い。

そういう意味でも鉄道はインフラ産業なんで一つの会社で全部をやっていくんじゃなくて、自治体なり国なりがランドマークをちゃんと描いてそこに向けてやっていかなくちゃならないはずなんですけどね。