クラフトアイスを食べながら

西尾

召し上がっていただきながら。

城戸

まず美瑛シングルオリジンミルクから、いただきます。あ、美味しい。

西尾

いま僕らはクラフトのアプローチでアイスクリームの価値を再定義してみたいと思い、今年の春にHiO ICE CREAMを作りました。大事にしていることが3つあって、1つは素材本来の味を活かすアイスクリームを作る。2つめがスモールバッチで少量のアイスクリームを作っていく。3つめが顔が見えるものづくりをする。加工者である我々がどういうものづくりをしているのか、どういう素材を使っているのか、それがこの工房がガラス張りである理由。僕らはオンラインを本店と考えています。ただし、オンライン上でものづくりを顔見せするのは難しい。そのためこの工房・店舗での発信がすごく大事になってきます。

城戸

(アイスを食べながら)あーこれ本当に美味しいですね。まさにシングルオリジンの名の通り、素材そのものの味ですね。アイスクリームになることで、より深みを増しているといいますか。

西尾

はい。可能な限り余計なものを入れずシンプルに作ることを大切にしています。アイスクリームの素材は冷凍してしまうと香りが薄くなってしまうんですね。

城戸

(2個目のアイスを食べながら)こちらも柑橘系そのまんまの味がありますね。

西尾

ありがとうございます。香料や着色料に頼らずに素材の良さを引き出したアイスクリームを作りたいという想いが根っこにあって、柑橘系のシャーベットですとゼストと呼ばれる皮を擦り下ろしたものを後入れすることで香りを高めるひと手間にこだわっていますね。

僕らの商品は材料費や製造にかかる手間を考えると量産品と同じ値段を付けられません。その分、味としては特徴のある自然な香りであったりとか、なめらかな食感を目指しています。いま召し上がっていただいた和製グレープフルーツといわれる河内晩柑では、まず黄色い皮を剥きます。そのあとに白い房のついた実の白い部分をさらに包丁でカットし実をむき出したものから絞って果汁をとり、また一部実自体も入れてアイスクリームを作ります。

ただし、なめらかな食感を作るために使っているアイスクリームを作る機械は1バッチで50-60食しか作れないため、量産には不向きな製法とも言えます。

城戸

でもこれからの時代には、大量生産的につくられたものだけでは満足しないユーザーが増えると思っています。ユーザーと一緒にものづくりをしていく感覚で、リアルなプロセスを共有していることが、本当に大事になってくると思います。

僕らは、スマサガ不動産という名前のリノベーション会社をやってますが、お仕着せの仕様の量産品である新築分譲マンションや建売住宅と違って、リノベーションはユーザー自身が積極的にものづくりに参加出来ます。そうすることで、ユーザーはより深く自分自身のライフスタイルを見つめ直すことができるのです。そこがリノベーションで物件価値を高めるポイントだと思っていて、だから、プロセスの共有はしっかり丁寧に行うように心掛けています。そういう意味でお互い似たようなスタンスの仕事かもしれません。

西尾

たしかに。

城戸

日本では、住まいを購入する際に、量産化されたパッケージに安心を感じる方がまだまだ多いですが、実は、ユーザーがしっかりものづくりのプロセスに参加するからこそ、資産価値として将来に残せる建物が増えるのだと思っています。だから、僕らは大量生産のためにパッケージ化された住まいをただ売ることはせず、その人にとっての資産価値とは何か? を、クライアントと一緒に考えることから始めていきます。

投資した以上の資産価値を確保しながら、自分仕様で最高に住み心地の良い住まいをつくるために、クライアントといっしょに資金計画や購入スキームの段階から考え、対話しながら中古物件を吟味し、リノベーションの設計を構想していく。そういう、量産品ではないものづくりに取り組みたいと思って、リノベーションの会社を始めました。

西尾

一緒ですね。

城戸

実際、似たような発想で仕事をされているんじゃないかな? と、HiO ICE CREAMのホームページを見て思っていました。

西尾

お金を使う理由を探しているというか、単に安いから買うというだけではなく(ユーザーは)少しぐらい値段は張ったとしてそれ以上にいいものを納得して買いたい方が増えてきているんだろうなと私は思っています。

城戸

今は、飲食でもそうですけど、不動産や設計、リノベーションの業界でも、もっといえば世界中に、処理不可能な量の情報が溢れていて、何が正しいのか判断できなくなって、みんなが迷っているじゃないですか。ユーザー側はもちろんですが、提供する側もこれから目指すべき方向性について迷っているというか。。

だからこそ、僕らとしては、誠実にモノや情報を提供していくことと同時に、ユーザーといっしょに成長していくというスタンスで、業界や市場の問題などもいっしょになって考えていく。そんなレベルのことをやっていきたいですよね。

西尾

本当にそうだと思いますね。僕らもこうやってテラス席を置いてお客さんにアイスクリームを食べていただいているんですけど、「どうですか?」と聞くと「おいしかったな」とか「こういう味がほしい」とか声があります。そういった話を聴きながら僕らも少しずつアップデートをしていきます。