テレビ業界を志望する子の最近の傾向ってありますか?

「こんな番組を作ってみたい」って志を抱く若い人は、確実に減っている気がしますね。テレビ業界はやっぱりキツイです。時間的にも体力的にも。給料は良いから一企業としてテレビ局を受験するんでしょうけど、いわゆるテレビマン(制作者)になりたいって入ってこない。この年齢になったら入社試験の面接官もするんですが、面接でも制作志望とか報道志望、スポーツ志望の“現場志望”があまりいない。僕らの頃は、同期は基本的に全員現場志望だったものですが…。僕は最初営業に配属されたので、やっぱりそれはちょっとショックでした。

番組づくりをしたいから、テレビ局を希望するんじゃないんですか?

西尾

そう思うじゃない?「こんなドラマ作りたい」とか、「こんなバラエティー作りたい」とか。でも今はそうじゃない。営業だったり、番宣みたいな“ちょっとだけ番組に関連ありそうなところ”を希望する。それこそWeb系のことをやりたい子だっている。いやいや局に来ても…ってね。WEBなら専門でやってるところのほうがバリバリそっちの分野の仕事あるよね。最近はそういう感じが本当に多い。

ちょっと意外過ぎますね。テレビ局で第一志望が営業したいなんて。。

西尾

もしかしたら、就活ガイドなんかで「その方が入社しやすい」とか言ってるところがあるのかもしれない。昔だったら制作部に配属だとガッツポーズなんですよ。これからどんなオモロイもん作ったろうかなって。で、先輩にアイデアを話しても「そんなん全然おもんない。どっかで見たやつやんけ」とダメ出しもらいつつ育っていくわけ。でも今制作部に来る子は、「俺なんて通用するでしょうか?」ともう不安でしかないんですよ。

平林

テレビに限らずいろんなところで、クリエイティブなものを作る人が、若い人の憧れのものとして、あまり理想とされていない感じがしますね。

でも本当にテレビ局志望で制作志望が減っているのは怖いですね。

西尾

うちに限ったことだけじゃないと思うな。いま外注先の制作会社でもADがいなくて、本当になり手がいない。ADから始まってチーフADになり、ディレクターへなっていくんだけど、でもまず「ADってきついんでしょ。」「寝れないんでしょ。」となる。ADを始めたとしても、1〜2年で辞めてしまう。どえらい時代になってしまっている。

それに輪をかけての働き方改革ってなってますもんね。

西尾

働き方改革は、僕らの業界ではどうかと思う。だって制作の現場は「その人じゃないといけない」場合が多い。ものづくりの会社はそれぞれのセンスとかそれぞれのスキルで成立する集団だから。それを時間で区切って「もう8時間経つから次の人にシフトで交替する」みたいなことは難しい。

スキルはシフトで引き継げませんもんね。

西尾

本当に。どこでもそうだと思いますけどね。

平林

こういうのは危機感というか、悶々としたものを感じるじゃないですか。結構社内でも同じように感じている人は多いんですか?

西尾

多いと思いますよ。ただ世代によって感じ方が本当に違うんですよ。

平林

同じ世代だとどうですか?

西尾

僕らの世代は多い。よく「効率よく」って言われるんですが、違うものさしで測らなきゃいけないものを一緒に測ろうとするから、訳がわからなくなっている。

やっぱり形から作るのも大事なんでしょうけど、果たしてそれが良いかどうかもあるじゃないですか。その辺が難しいですよね。それこそさっきの就職話じゃないですけど、若い子なんて形から入ってくるから余計に難しい。

西尾

テレビ業界が左うちわの時代じゃ無くなってますもんね。

いわゆるテレビ業界はどうなっていくのか。全く違うものになるんじゃないかって不安もあるよね。

平林

10年前はそれを感じなかった?

西尾

10年前だと感じなかったですね。安泰とも思ってなかったけど、まだ大丈夫と思っていた。小さいユニット単位の番組論でいうと、「こうすれば成立はする」みたいなフォーマットは作れる。ただもっと大きくテレビ局だ、テレビ業界だとなると、有り体ではなかなか難しいですよね…。業界のビジネスモデルも変わっているじゃないですか。いわゆる番組作りと電波の収入だけで成り立っている局は少ないんじゃないですか?キー局は映画出資をしたり不動産までやってますよね。本当にこれまでになくいろんなことをやりだしている。

たぶんこれまでのテレビは「面白い番組を作る」のがゴールだった。サッカーみたいに「ゴールにボールを入れたら1点入る」って感じの分かりやすいルールだった。とりあえずみんなが見てくれる番組を作ると。でも今はそれをやってもそもそも観客が入らない。付加価値をつけないと試合さえ見にきてくれない時代ですよね。

番組作りのスタンスは一貫するものなのか

僕はもともと入社してから8年間は営業部にいました。そこから初めて作る側に異動になって「おはよう朝日です」のディレクターを4年やりました。それから東京制作部で8年半、そこでバラエティ番組、「M-1グランプリ」しかり、「世界の村で発見!こんなところに日本人」、「大改造!!劇的ビフォーアフター」もやらせてもらいました。そこから本社に戻って3年間制作をやり、いま報道番組「キャスト – CAST-」で1年になります。

番組作りのスタンスってのは、番組によって変わります。すごく考えるのは、この番組にとっての「オモロイ」って「何?」みたいなことです。「オモロイって何やろな」は、ちょっと哲学的かもしれないですけど。すごく漠として広いものだし。

例えば「平林さん、最近面白いことあった?」って聞くとしますやん。そうすると「オモロイこと?」「えっ、いきなり言われても」ってなりませんか? 

平林

そうですね。

西尾

例えば、聞き方を変えて「最近爆笑したことあった?」と聞いたら?

平林

もっと具体的ですよね。

西尾

そう。いわゆる「おもろいこと」っていっぱい種類があるんですよ。

で、なんやろう?って改めて考えるわけです。

平林

それってよく取材のときに「また来た!」と思うときがあるんですよ。それに対してこっちは、何を答えてもいいのかなって思ってしまう。

西尾

僕らって1つのキーセンテンスで、「面白いこと」を考えろって問われるわけじゃないですか。その中身が”腹抱えて笑えること”なのか、”感動すること”なのか、”悲しいこと”なのか? 面白いこと=興味を引くこと だと。funnyだけじゃなく、interesting。だから、僕はそれぞれ担当する番組ごとに憲法を作るようにしています。

例えば「大改造!!劇的ビフォーアフター」。あれは一言でいうならば“リフォームの番組”じゃないですか。でも、ただリフォームしているシーンの積み重ねだけでは、そこまで視聴率を取ることがなかった。やっぱり視聴率を取るのは少し変な言い方だけど、人の心を揺さぶる回になるわけ。

「大改造!!劇的ビフォーアフター」には、家族再生の物語が必要なんです。リフォームは実はただの手法で、何かに困っている家族がいて、リフォームという「How」の要素で、家族がハッピーになったことを描くんです。

だからあの番組、実はすごく”ホームドラマ”なわけです。ビフォーとアフターは家のビフォーアフターではなくて、家族物語のビフォーアフターを描きましょうと僕はずっと言ってました。それが憲法。

今やっている「cast」は報道番組なので、“憲法”ってなると、それこそ「客観性」の話になってくる。加害者側の人はこうだと言っているけれど、じゃあ被害者側は何と言っているのか? 両側の意見を出さないと偏重報道になるようなフィールドですよね。だから、中身が丸まっていくこともあります。

話を戻しましょう。「番組作りのスタンスは一貫するのか?」って質問に対しての答えは「番組番組で変えている。」です。そこに自分が無いっちゃ無いんですよね。僕の制作マンとしての信念は、根っこの部分では持っているんですが、そのときの持ち場で変えていかないと成立しない。ただ、「面白い=interesting」って何だろうと、ずっとそれだけは考えています。